2010年8月11日(水曜日) 「リストラなう!」と「傷だらけの店長」
★出版ギョーカイのことをウオッチしている(というか濁流に溺れている)私としては、やはりこの2冊を並べて取り上げないわけにはいかない。
某大手出版社で起こった早期退職優遇制度。40代で営業職に務める著者は、わずかな逡巡のうえ、会社を辞めることを決意する。そこからの日々を丹念につづったたぬきちの「リストラなう」日記には、様々な業界関係者から何からが集い、コメント欄は熱い議論と批判と称賛の声があふれかえる・・・本書はそのブログの文章、コメント欄をを単行本化。「電車男」に続けと新潮社が本書の刊行に手を挙げたというのは面白い。
本書、というかこの著者の魅力は、「大企業病に罹っていることを自覚し、そのことをブログで自らを晒すことによって変わろうとし、もがいている」ところにあると私は思う。確かにこの会社の給料は異常に高いし、こんなに優遇されてる「リストラ」なんてないと思うし、そもそも彼は会社のアレコレを「批判」するだけで、社内で何も改善に向けて動いていない(ように見える)。でも、それは多くの企業従事者は多かれ少なかれ思い当たる節があるんじゃないだろうか。
たぬきち氏は、会社の歯車の一員として動いてればいい状況下で生じていた、甘えや無知、無自覚といった、普通なら後から気づいたら恥ずかしくて隠したいようなところまでも全部さらけ出し、読者の辛辣なコメントにも愚直に向き合って凹んだり舞い上がったりする。見てて、なんかこちらも恥ずかしくなる。だけど、これって自分も同じような状況なんだ。自分は単に恥ずかしいところを隠して取り繕ってるだけなんだ。
パルコ
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ある書店チェーンの雇われ店長として働く著者は日々激務と格闘している。さばききれないほど増え続ける商品、理不尽な客、万引との戦い、手のひらを返す対応の取次や出版社、現場の意向を汲まずにコストカットとノルマ達成を厳しく追及する本部・・・くじけそうになったり、頭に血が上ったり、自問自答を繰り返すたびに、著者は「本を売る喜び」を思い起こし、「それでもやらねばならない」と無理に気持ちを奮い立たせるのだった・・・ある、大型書店が、すぐ近隣の駅前にできるまでは・・・・・・。
本書は出版業界紙「新文化」に連載されており、その当時から「業界新聞でこんなの載せるな」「現場店長の心情が痛いほど伝わる」と賛否両論が巻き起こる問題作であった。いま、改めて単行本となった本書を読みかえすと・・・これは単なる「書店現場のブラックな現場告発」を読みとるだけのものではない、という風に私は感じた。本書から非常につらいほど伝わってくるのは「わかっているけど、できない」ことの積み重なりだ。これも程度の多寡はあれ、社会人なら誰でも感じていることだろう。会社や顧客からの理不尽な要求、明らかに誤りで負けると分かっている博打に突っ込んでいかねばならない状況、その時のやるせない気持ち、無力感、焦燥感・・・これは出版ギョーカイ告発本としてではなく、ある種の「文学」として読み継がれるべき本ではないだろうか。
★本書2冊がほぼ同時に出版された、というのは偶然とはいえ非常に面白い。単に「大手出版社は今も好待遇で書店は完全に破綻している」という縮図を読みとるだけなら簡単だ。そもそも両書の装丁の雰囲気が切迫感の差を象徴している、とも言えるだろう。とはいえ、どちらにも共通するのは、今まで続いてきた出版流通の構図が崩壊し、濁流が巻き起こる中で慌てもがく個人の姿だ。私自身、まさに出版の中にいるのでこの抗いようののない流れを切実に感じ入る。自分も木の葉のように流され続けてるだけだ。しかし、伊達氏から「何を甘いことを」と失笑されそうだが、少しでも、何か流れを変えることはできないのだろうか、自分が溺れないよう振舞うだけでなく、少しでも流れを治め整えるることはできないのだろうか・・・と日々思い、僅かながらも声を張り上げたり流れに竿を挿したりしている・・・というかしていきたい。
これは出版に限らず、いま日本のありとあらゆる産業の中で起こっている事象なのだろう。できれば単なる「ギョーカイ本」としてではなく、広く一般にも伝わるものとして読まれてほしいと思う。












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