2010年1月15日(金曜日) 日本電子書籍出版社協会設立に思うこと。
★電子書籍化へ出版社が大同団結 国内市場の主導権狙い
この朝日新聞報道を受けて(何せ朝刊の1面にでかでかと出ていたし)、自社内でも「なんだあれは」という問い合わせがいくつも私のところへ。改めて、「紙の新聞の影響力」を思い知らされた。ネットのニュースだけなら、弊社の経営陣やデジタル関係しない他部署の人たちはこんなに騒がないだろう。
★今年は「書籍のデジタル化元年」と言われている。古くから日本電子出版協会というのがあるが、こちらは出版社だけでなく、IT関連企業等も集まっており、技術的な話がメインになっている印象がある。また、比較的辞書や専門書系の話題が多く、文芸・エンタメ系の刊行物の電子化の話は少ない。一方で、コミックの世界ではデジタルコミック協議会というのがあり、精力的に活動をしている。また、雑誌の世界では日本雑誌協会の内部委員会としてデジタルコンテンツ推進委員会というものがスタートし、企業を集めて実験を行おうとしている。というわけで、確かに実は「文芸系の書籍の電子化」というのはエアポケットのように空いてる場所だったのだ。日本書籍協会はどうしても規模が大きすぎて、電子化の推進、という話では活動しづらい、という話も聞いたことがある。
★日本電子書籍出版社協会は、もともと電子文庫パブリを運営していた8社の出版社が中心となり、次なる活動をということで一般社団法人化した組織である。扱われるテーマは、やはり著作権者や流通業者、あるいはGoogleや図書館などの電子化の動きとの意見調整や、電子書籍流通に適したフォーマットの検討、といった技術的なことも含まれてくるであろう。しかし、上記の記事は「amazonに対抗」と書いてあるが、出版社からすればamazonだってパートナーの一社だろう。不当に安くコンテンツを買い叩かれたら反発するかもしれんがライバルとして何かをする存在ではないのでは、と思うが。どうしても「パブリという直営書店」を持っているからそう見られるのか。
★紙の本の出版権とデジタル化権の抱き合わせには反対
上記報道を受けて、一方で著作者の立場からは「紙の本とデジタル化を法的にいっしょくたにされてるのは困る」という意見が出てきている。著作権者としては、あの新聞記事を見たら、こういう主張にもちろんなるだろうな。自分も以前、紙で書いた原稿をそのままネットに転載された時、「見え方の違い」に違和感を覚えたことを思い出す。執筆者としては「どんな媒体に乗るか」を想定しながら書いているわけで、メディアを変えるとなんとなく文章そのものの印象も変わる気がしてくる。それを「出版社に預けたらもうこちらのもんで」と言われてしまったら、ねぇ。
★結局のところ、出版社はこの先「この会社で本を出すメリットは何か」「ウチで本を出すとどんなサービスが付加されるか」ということを、著者に対してきちんと提示し、「それならおたくにまかせましょうか」と信頼していただけるかどうか、にかかっているのではないか、と私は思っている。
★上記の記事でもたとえば、松永氏は(著者がamazonと直接契約をするとしても)編集者と山分けをする、という文言が出てくる。つまり松永氏は編集者の存在を必要だと思っていただいているし、ある種の共同著作者として対価を分けようという意識を持っていただいているということだ。ならば、今のわれわれが著者に対して行うことは、「弊社に任せていただければ、良いコンテンツを作る手助けをすると同時に、流通についても万全のサポートをして著者に余計な手間をかけさせず一部でも多く売る」というサービスをきちんと提示し、それに見合う対価をきちんとシェアする、ということなのだろう(読者に対して、流通パートナーに対して言うことはまた別にあるが)。
★なぜ、今まで著者は大手の出版社で本を出したがるのか。もちろん出版社の持つブランド、ということもある。優秀な編集者が大量の経費を使って著者と付き合ってくれるというメリットもある。しかしそれだけでなく、「大手出版社のほうが初版が多いから印税支払いも多い」ことも重要な要素だろう。かつてのように、超大手出版社なら最低初版1万部刷るが零細出版社だと3000部から、となると、その時点で著者の収入は同じ本を作っても3分の1になる(そのぶん、小さい出版社のほうが丁寧に一冊一冊を扱ってくれるから長い目で見ると著者の得になる、なんて話もあったが)。しかし現在は、大手出版社でも刷り部数をどんどん減らしており、あまつさえ「作り部数に対する印税支払い」ではなく「実売部数に対する印税支払い」を要求してくる所すらある。こうなると、「老舗だから、大手だから」売れるという時代ではなくなってきている。
★じゃあそんな時に、われわれは「弊社ならではのプロモーション施策」「弊社ならではのオンライン書店対策」「弊社ならではの電子流通促進」「弊社ならではの権利侵害対応」のような、「その会社ならではのノウハウ」をどう磨き続け、一冊当たりの本の価値を上げることができるのか。ということを目指していくべきなのだろう。
★それにしても、この手の協議会だの委員会だのが本当にあちこちで同時多発的に立ちあがっており、自分でも混乱する。これ全部をきちんとウオッチできている人っているんだろうか。しかも、ここに「Web広告」の動向も加えるとしたら・・・いやーデジタルコンテンツの世界はすでに広い。なんとか私は追おうとしてるけどね、頑張って。
★2月1日の2010年代の「出版」を考えるイベントに予約してみた。ほぼ知っている人達ではあるが、このテーマで集まるとどのような話になるのか、注目。このころまでに、今の自分の仕事は・・・少しは落ち着いているんだろうか・・・ふうぅ・・・。










