diary

2010年7月28日(水曜日) リュウドの折りたたみキーボードがiOS4に相性良し!

★自分の中でのiPadブームが一段落してしまい、デジタルガジェット熱も少しさめたかな、というところに・・・これが届いてしまって大興奮(いや、もちろん自分で買ったんだけど)

リュウド アールボードフォーケイタイRBK-2100BTJ Ver.2.1(Bluetooth HID、JIS配列) RBK-2100BTJ
リュウド (2008-07-18)
売り上げランキング: 198
おすすめ度の平均: 4.5

5 最高です!
4 初めてのキーボード
5 これは使いやすい
5 i-phoneでも使えます
5 iPadでも使えます。

 
ちょうど「売れ行き2倍」 iOS 4でリュウドの折りたたみキーボードが品薄にというニュースを見たり、ホリエモンが愛用していることを知ったり、ということで気になり注文。運が良かったか私は待たされることなく数日で届いた。ちなみに私はJIS配列のほうのを購入。

WindowsのキーボードをMacで使うことによる違いとか、iPhoneの変換がPCと違うとかで若干戸惑いはあるけど、とにかく入力はすごく快適。また、何せ折りたたみ式でたたむとちょっと厚めの文庫本くらいのサイズになるので、鞄の中に常に忍ばせておくことも可能。Bluetooth接続なので、最初に一度認識させておけば、あとはiPhone立ち上げてキーボードを開けば自動的に接続して使えるようになる気軽さ。

講演会とかで机アリの席に座れれば、Twitter中継が格段に楽になることだろうと思われる。また、Evernoteでメモを取る機会もけっこう増えそうだ。ていうか、これの登場でポメラがヤバいよね。もちろん起動の早さなどではかなわないけど、携帯性の面ではまさに互角。

まだ買ったばかりなので、電池(キーボード本体に単4電池2本必要、別売)の持ちがどれくらいになるのかなど、自分でもわかってないことが多いが・・・iPhoneユーザも増えてきた今、また新たなジマンのタネができたということで。

★とはいうものの、こないだ某女性誌の編集長と立ち話してた時、「iPadはすごく編集作業に使える。特にスタッフと一緒に撮影した写真を並べて粗選びして大ラフを構成するときとか、明らかにiPadを使ったほうがやりやすい」と話していた。なるほど、そういうこともあるのか。他にも「ケータイでメール受信してその場でPDFファイルを見られるのは外で原稿確認したりするのに使える」と言う人も多く、編集者は続々とiPhone/iPadユーザに変わりつつある、といえそうだ。

★と、デジタルものに興奮してしまったので、印刷会社が手を組んだ「電子出版制作・流通協議会」や、同日に発足した「デジタル教科書教材協議会」に関してはあまりコメントする気がなし。関心がないとかではないのだが、何せこれだけいろんな団体が出てくると、今後整理や棲み分けが必要になってくるだろうし、しばらくは意見交換程度の役割が中心で、ここで何かを作る、という感じにはならないだろうから。

★その「電子出版制作・流通協議会」の懇親会でお偉い方々の間をうろうろ歩きまわっていたら植村八潮さんを発見。というわけで『電子出版の構図』の話をちょっとだけする。

電子出版の構図―実体のない書物の行方
植村 八潮
印刷学会出版部
売り上げランキング: 14540

 
前回書いた時はまだamazonに書誌情報があがっていなかったが、今見ると・・・品切れになってるぽい。大丈夫かこの出版社は!でも改めて本書はオススメ。出版の電子化に関する「騒動」は大なり小なり十数年前から連綿と続いてきたのだな、という、歴史というか「流れ」が見える。

2010年7月21日(水曜日) 「読める」電子書籍から「読みたい」「買いたい」電子書籍を作るために。

★いつもの記事とは趣を変え、電子書籍に関して最近自分が考えていることを、だらだら書いてみようという気持ちになってきた。

★電子書籍の世界に飛び込んで丸3年くらい。特に今年はけっこう真面目に電子出版関連の企画を考えたりいろんな会社の人とあったり業界団体の集まりやセミナーに首をつっこんで話を聞いたりしているのだが、「紙の世界」に比べるとまだまだ成熟してないというか、編集者や著者がコンテンツで「競争」できるレベルにも到達していない、という気がしている。

★フォーマットをどうするか、プラットフォームをどうするかというのはあくまでも紙の本を電子化して電子デバイスで「読める」段階にする話、にすぎない。「読める」のレベルを超え、「読みたい」と読者に思わせるものにしていくには、また別の仕掛けが必要だ。電子書籍で商売をしようという自分が言うなら、「(カネを出しても)買いたい」とユーザに思わせるサービスにしなければ、自分たちの米代を稼ぐことはできない。

★そのためには、コンテンツそのものを電子ならではの表現形態にどう発展させていくか、というのも大事だろう(個人的には、安易なリッチコンテンツ化やソーシャル連携には疑問だが、まぁそれは置いといて)。しかし、私自身は「電子書籍をどう売るか」という視点が、現状ではあまりにも貧弱だ、という風に思っている。「読む空間」も重要だが、「買う空間」は同じくらい、あるいはそれ以上に重要なのではないか。

★現業でお付き合いをしている会社もある中でこういうことを言うのは気が引けるが、残念ながら現在の電子書店を見ていて、私はまったくわくわくできない。自分の知らない新たな商品に出会える喜びとか、自分が思いもよらなかった商品をオススメされる驚きとか、リアルの書店やamazonのようなオンライン書店では実現できていることが、電子書店と呼ばれるサービスでは、まだどこも実現できてないように思われる。

★「本の学校 出版産業シンポジウム」で、植村八潮氏が「iPad版の京極夏彦『死ねばいいのに』って、15000ダウンロードされたというけど、あのうち全文を電子で読んだ人がはたして何人いると思うか?」という疑問を呈されていた。私も、とりあえず買ったが読んでない大多数のうちの一人だ。だけど考えてみると、それって紙の本でも同じなんじゃなかろうか。多くの読書家は「欲しくて買ったもののまだ読んでない」本をたくさん抱えているのではないだろうか。

★つまり、もともと本とは「読書」だけが楽しいのではない。「購書」という行為そのものが、楽しいのだ。

★そう考えると、電子書籍の世界では、まだ「魅力的な購書空間」を演出しているサービスに出会えてない気がする。

★「プラットフォーム事業者」が狙っているのはどちらかというとバックエンドの世界であって、読者と接するフロントエンドの部分ではあまり画期的な発表がなされてない。あるいは、読者との接点としては「端末」のほうに視点が向かっているきらいがある。もちろんハードも重要だし、コンテンツの量も重要だろうけど、そのハードにどんなサービスが載るのか、のほうが読者にとっては本当は重要だろう。

★意識的にか無意識にかわからないけど、そのあたりに気づいているのが、電書部の活動なのだと思う。先週末のイベントには行けなかったが、「電書フリマ」という「電子書籍を買うためのリアルイベント」は、一見変な気がするものの、読者と著者を集めてコミュニティを形成し「電子書籍と出会う空間」を見事に演出している。あるいは、昨今流行っている電子書籍関係の多種多様なセミナー・講演会で、これも「電子書籍ビジネスをやりたい人、不安な人」を集めて一つのコミュニティを形成している。

★「購書空間=擬似的な書店空間」と考える必要もないだろう。リアル書店においても、店売だけでなく「外商」という売り方もある。書店のおやじさんが雑誌を自転車で配達しながら「お、おたくのぼっちゃん、今年小学校だよね、『小学一年生』定期でどう?」というような営業活動を電子書籍でやろうと思ったらどうするか?「お、kajieさんはいっつも電子書籍のことばっかりツイートしてるよね、どう、今週の『週刊東洋経済』はメディア産業特集だよ」とDMしてくるサービス、とかになるのかな。

★繰り返しになるが、デバイスの普及や出版社の努力によって「読める」電子コンテンツが増えてきているのは事実だ。しかし、「読める」ではだめだ。「読みたい」と思ってもらえないといけない。そのためには、単なる二次利用にとどまらない電子ならではのコンテンツの開発も必要だ。しかしそれと同じくらい、いやそれ以上に読者とコンテンツの「出会いの場」を設け、「読みたい」「買いたい」と思っていただけるようなサービス開発が重要なのだと思う。

★で、ここに手を挙げて何かしようという人が、意外に少ないような気がするので・・・自分は出版社にいながらコンテンツを作らない人、というコウモリのような立場にいる人なのだが、そのどっちつかずな立ち位置を利用して、この領域を今年はもうちょっと頑張ってみたいなぁと思う。どこまでできるかわからんが。

2010年7月14日(水曜日) 東京国際ブックフェア、本の学校シンポジウム、電子出版関連書籍レビューetc.

「本の学校 出版産業シンポジウム」はおかげさまで今年も盛況に終わりました。来てくださった皆様、誠にありがとうございました。「本の学校のセミナーはどれもレベルが高い」というお褒めの言葉をtwitter上でも見かけました。重ねて御礼申し上げます。聴衆が出版産業従事者でこの手の問題に関心が高い人、というターゲットがはっきり絞り込まれている上に、利益追求で「客寄せ」をしなければという発想をする必要がないために、肩書き等にこだわらず本当に面白い話をする人、われわれ自身が話を聴いてみたい人をお呼びする、ということで、そのようなご評価をいただくことができているのかもしれません。

★そして、休む間もなく「でるべんの会」も開催、ということで「書棚と平台」の著者でもある、東京大学大学院の柴野京子様をお呼びすることになりました、が・・・なんと、この日記に書く前に、メーリングリストとブログだけで予約が殺到し、わずか数日間で募集を締め切らざるを得ない事態になってしまいました。誠に申し訳ございませんが何とぞ御容赦ください。

★それにしても、2010年の東京国際ブックフェアは「デジタルパブリッシングフェア」の勢いが例年以上に目立つものだった。特に、前日より電子書籍事業に関するプレスリリースを打ちまくっていた凸版印刷、大日本印刷のあたりは平日だと黒山の人だかり。であるが、個人的にはさほど目新しい技術やサービスはあまりなかったなぁという印象がある。どうしても出版社向けの「ソリューション」が中心の展示なので、読者が喜ぶようなわくわくする「サービス」があまり表に出てこなかったのかもしれない。

★本日は、ブックフェア等で販売、先行販売されていた出版産業および電子出版に関する書籍を一挙紹介。それにしても電子出版に関する論考を紙の本で読む、というこのことが、なんとも面白いなぁと思うのだが。

 
「本の学校」の昨年度のシンポジウム内容がまとまった記録集。午前中のトーハン、日販、丸善等の経営トップが集まったメインセッションと、「デジタルコンテンツ流通インフラ」「自由価格本(リメインダー)」「リアル書店の役割」「責任販売・時限再販」に関する分科会の内容が収録されている。改めて読み返すと「あー、35ブックスってあったねぇ」とか、すでに懐かしいと思うことも多いけど、抱えている課題やノウハウに関しては、今でも十分に通じる内容かと思われる。
 

ブックビジネス2.0 ― ウェブ時代の新しい本の生態系
岡本 真 仲俣 暁生 津田大介 橋本大也 長尾真 野口祐子 渡辺智暁 金正勲
実業之日本社
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今年の本の学校でメインセッションのコーディネーターを務めていただいた仲俣暁生氏も編集に携わる「ウェブ時代における新しい本の生態系」を探る。上記『出版産業、改革待ったなし!』本が「既存出版産業の改革」を描くのに対し、本書で示す「本」は、決して既存産業に縛られるものではない発想からスタートしている。かといって、「iPadで出版が変わる」といった表層的なイノベーション礼賛本でもない。ここで描かれる「ウェブ×出版×図書館=新しい本の生態系」という未来像がどこまで実現できるか、誰がそれを担うのかはわからない、が、数十年くらいたった時に「ああ、あの時言ってたことは本当だった」と評価されるんではなかろうか。
 

電子書籍と出版─デジタル/ネットワーク化するメディア
高島 利行 仲俣 暁生 橋本 大也 山路 達也 植村 八潮 星野 渉 深沢 英次 沢辺 均
ポット出版
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前述の仲俣氏に加え、「本の学校」の運営委員会中心メンバーの文化通信星野氏、東京電機大出版局の植村八潮氏、ポット出版の沢辺均氏らが一度に出演。2月に行われた「2010年の『出版』を考える」に加え、Web等のインタビュー原稿等を収録した非常に読みやすい一冊。沢辺氏は常々「電子時代になって出版社がいらない、というのならそれはしょうがない」と語っている。「石油を使うようになって、石炭会社のほとんどはなくなった。DTPの時代になって出版社は次々と製版屋や写植屋をつぶしてきた。次は出版社だというのならそれは時代の流れだ」という氏だが、その一方で「出版はとっても面白い状況になっている」(本書前書きより)のだ。そのわくわくする感じは、本書を読むことでも伝わってくる。
 

 
『電子出版の構図~実体のない書物の行方』(植村八潮/印刷学会出版局)

最後に、「本の学校」シンポジウムで電子出版に関しての分科会にご登場いただいた植村八潮氏の単著を。印刷業界の専門誌に12年にわたって連載された原稿を時系列にまとめたものだが、これを読むと電子出版の隆盛と動乱が今に始まったものではなく、形をかえて再三起こってきたもの、その中で環境の変化や出版市場の変化に合わせて、徐々に形を変えつつある状況が非常によくわかり、勉強になる一冊。ITジャーナリストの佐々木俊尚氏からは「守旧派の代表」として批判を受けている氏だが、本書を読むといかに植村氏が冷静な判断のもとに「紙の本の重要性」を訴えているかがわかるだろう。
ただ、本書がいまだにamazonに書誌情報すら載っていないのはいかがなものか(かろうじてbk1には書誌情報が掲載されている)。小出版社だから手が回らない、ということなのかもしれないが、上記の書籍がきちんとした情報掲出を行っているのに対してみると、残念な、というか脇が甘いとしか言いようがない。ブックフェアで先行発売するくらいならそこまで考えないと。